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驚異の空撮VR映像を無料で公開する「AirPano」が狙う日本での目標とは (1/2)

 空中撮影とVRを組み合わせた驚異の映像を中心に無料で公開している「AirPano」をご存知だろうか? ロシアに拠点をおくAirPanoは2006年ごろ、当時はまだ珍しい空中での360度撮影を行ないたいと、現会長のOleg Gaponyuk氏がヘリコプターによる空撮を行なう会社として設立。現在は、ドローンや360度撮影できるカメラを使って、世界各地の動画や写真を毎週のように公開している。

 そんなAirPanoが、日本に視察を兼ねて来日。江ノ島でドローンを飛ばして撮影する予定だったが、残念ながら大雨で中止。実際の撮影風景をこの目で見ることは叶わなかったが、CEOであるSergey Semenov氏にAirPanoの活動についてお話を伺えたので紹介しよう。

利益を求めず世界各地の絶景を300ヵ所以上公開

CEOのSergey Semenov氏(右)とパイロット・フォトグラファーのStanislav Sedov氏

――AirPanoは、これまでどのような活動をしているのでしょう?

 我々のミッションは、世界中のみなさんがなかなか行かれない場所を、360度の映像で、無料で見せたいということです。AirPanoのサイトで公開しているものはすべて無料で見られます。週1回更新していて、今回日本に来て撮影した映像は、おそらく1年後くらいに公開されるでしょう。もちろん、依頼されたものは優先的に制作したり、撮影風景などはSNSを通じて随時公開しています。今でこそB2Bでライセンス契約したりして収入を得ていますが、撮影費用は考えず世界中飛び回って、みなさんに見たことのない映像を届けています。

――採算度外視で活動されているのはすばらしいですね。

 最初の6年ぐらいは、ほぼ自腹で撮影をしていて、2013年まではサイトに広告も出さず、お金儲け度外視で運営してきました。現在は、動画を再生するときに表示される広告によって得られた収入は、サーバーやマシン代として使っていますが、基本的に広告無しの無料で世界のみなさんに見てもらいたいと思っています。最近チャンネル登録数が10万人を超え、YouTubeから表彰も受けましたし、サイトや映像に関してはさまざまな賞も獲得しています。

 また、写真や映像をアップするだけでなく、ドローンの飛ばし方や撮影の仕方など教育向けの記事やボランティア活動もやっていて、ここからプロに育った人たちもいます。

国や地域との協力で不可能を可能に

――すでに訪れた地は100ヵ国を超え380ヵ所以上の場所で撮影を行なっていますが、撮影場所はどのように決めているのでしょう。

 もともとはヘリコプターを飛ばせるところでした。今は、ドローンが使えるので飛ばせない場所はほとんどありませんが、場所選びはまず、よくある「世界で死ぬまでに見ておきたい101ヵ所」といった記事に掲載されているようなところですね。でも1年ぐらいですべて撮ってしまったため、次は死ぬまでに見ておきたい200とか300という場所を選んでいます(笑)。

 とにかく、みんなにぜひ見てもらいたい場所を探しては、撮影しています。SNSでユーザーからの情報を元に行くこともあります。また、世界中にあるナショナルジオグラフィックの協力を得て撮影を行なったりもしています。

ドローンだけでなく、これらのカメラを使って撮影することも。ソニーなどサポート企業も多い

 ただ、撮影はすんなりいくものではありません。昔なら、許可を取らずに撮影していて警察が来ても「面白いですね協力しましょうか」とあまり問題にならなかったのですが、最近は必ず許可が必要で、国によってはなかなか許可が降りないこともあります。そのため、地域や国と協力することが重要で、そうすれば許可が降りやすくなります。

 たとえば、中国のパンダがたくさんいる動物園で映像を撮りたいと思ったとき、一般の人が入れないところは飼育員へカメラを渡して撮影してもらうことで、パンダを間近で撮影することができました。普通ならこんな貴重な映像は撮れません。やはり国へ協力を求めることで、不可能を可能にすることができます。

 パンダが間近に見られる360度映像。よく見るとSergey Semenov氏とStanislav Sedov氏も写っている

 また、AirPanoがロシアで一番人気のあるサイトとして受賞した際、プーチン大統領から賞状を直接いただきました。そのとき、自分たちの活動の話をすることになり、「世界中でドローンを飛ばして撮影しているけど、地元のクレムリンで撮影したことがないからぜひ撮りたい」と尋ねてみたら、プーチン大統領から側近に聞いてみてと言われ、交渉の末クレムリンの敷地内からドローンを飛ばして撮影することに成功しました。

 クレムリンの赤の広場や宮殿を、普通では見られないポイントから撮影している貴重な作品

 公開後に、みんなからどうやって許諾が降りたのか聞かれましたが、「プーチン大統領と握手できたら、撮影できるよ」って答えています(笑)。

 こうした、なかなか撮れない場所での映像を公開することで、逆にオファーが来るようになりました。国や地域から積極的に協力してもらえるようになり、よい循環になっていると思います。

――日本で公開されているのは渋谷のスクランブル交差点の1つだけ。しかも空撮ではありません。日本はドローンを飛ばすだけでも一苦労だと思いますが、どこを撮りたいと思っていますか?

 東京都内の上空からぜひ撮りたいですね。現状だとドローンもヘリコプターも許諾が降りません。ほかには富士山をヘリコプターで撮影したいですし、猿が温泉入っている風景(地獄谷野猿公苑)とか、沖縄などで撮影したいですね。

 ニューヨークの映像。東京もこのような映像を撮りたいはずだ。彼らの作品には、機材がほとんど写っていない。ヘリコプターでさえもだ(意図的に写っているものもある)。しかもつなぎ目はわからないほど精度が高い

 あとは、360度のドキュメンタリーを撮るということも好きなので、たとえば舞妓さんや芸者さんといった、日本の文化に関することについて、映像として作品を残したいとも思っています。日本の文化を空中からだけでなく360度映像で撮ることに興味があります。

 日本が許諾を取りにくいことは、国によって決まりも常識も法律も違うため理解はしていますし、それに従わなければなりません。ただ、我々は東京に行けない、富士山が見られないという世界中の人に見せたいんです。

 2年前ぐらいまでは自由にドローンも飛ばせていたものが、事件のために以降はすべてダメになってしまいました。でも、それはおかしくないでしょうか? 我々は撮影のプロです。技術的な免許が必要とか、完全にアウトにするのではなく、場合によっては許可を与えてほしいと思っています。

ヘリコプターでの撮影も、ドアは空けたままカメラを下方に垂らすように持って撮影するため、東京の街なかだと許諾を取るのはハードルが高い

 これまでも、レオナルド・ダ・ビンチなどの芸術家は、当時の世間から見ると馬鹿げていると見られていました。でも時間が経つと、それは最高なものだったと認められています。我々は、そういった歴史に残るような芸術的作品を映像として残したいだけなんです。なので地元の会社とか地域と協力を得ることで、法律を破らずに乗り越えられるものと考えています。