度を越した細部描写で“映画よりリアル...

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度を越した細部描写で“映画よりリアル”。歌もすごいオペラ「トスカ」が映画館で楽しめる | GQ JAPAN LargeChevron Menu Close Line Facebook Twitter Instagram Facebook Twitter Pinterest Line Facebook Twitter Instagram LargeChevron

舞台は1800年のローマ。歌手のトスカは画家である騎士カヴァラドッシと愛し合っている。画家は脱獄した政治犯アンジェロッティを助けるが、トスカは恋人が不審な様子なので浮気を疑う。警視総監スカルピアは、トスカの嫉妬心を煽ってアンジェロッティを捕らえ、美しい彼女もわがものにしようと企む。捕らえられたカヴァラドッシの命と交換に、スカルピアはトスカの肉体を求める。トスカは折れるが、たまたま見つけたナイフでスカルピアを刺殺。彼女はカヴァラドッシに警視総監が書いた通行許可証を見せ、処刑は見せかけだと説明するが、画家は本当に処刑されてしまう。スカルピア殺しが発覚して追手が迫り、トスカは屋上から身を投げる。

じつにスリリングな展開だ。しかも、ここに挙げた4人がみな非業の最期を遂げ、こうした悲劇がすべて24時間以内に完結する。古典演劇のセオリーに「三一致の法則」がある。その筆頭項目が「事件は1日のうちに終わらなければならない」という「時の単一」で、これがうまく機能するとドラマが締まるという好例だ。

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ところで、「トスカ」は舞台へのお金のかけ方で印象が変わりやすい。1900年に初演されたこのオペラの舞台は、第1幕がサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、第2幕がファルネーゼ宮殿、第3幕がサンタンジェロ城と、いずれもローマにいまも残る実在の名所。それをいかにリアルに描くかによって、緊迫度も、観る側のドラマへの没入度も、大きく違ってくる。

ディテールが作り込まれ、歴史の現場に立ち会っている気に

ジョナサン・ケントが演出したロイヤル・オペラ・ハウスの「トスカ」は、各幕の舞台の作り込みが半端ではない。たとえば第1幕の教会。手すりの質感から壁面や石材の再現の仕方まで徹底的にリアルだ。舞台となった教会とは構造もディテールも異なるが、舞台として見せやすい構造にすることで、かえって、本当に1800年のローマで物事が進行しているように見えてくる。歴史的な美しい衣裳も、その助けになっている。