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つながる建機「Cat Connect Solutions」 -日本キャタピラー濱野氏 インタビュー

建設機械・ディーゼルエンジン等の販売・サービスを手掛ける日本キャタピラー。2016年には、建機や現場をデータで管理する「CAT CONNECT SOLUTIONS(キャットコネクト ソリューションズ)」を発表している。今回、つながる建機についてインタビューを実施した。

・お話いただいた方日本キャタピラー合同会社 マーケティング部 部長 濱野秀男氏

・聞き手株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二

目次

キャタピラーのCat Connect Solutions とは

小泉: 御社の取り組みについて教えてください。

濱野: Cat Connect Solutionsでは、衛星や携帯電波を使って建設機械からテレマティクスを活用してデータを取得し、さらに人による点検やその他の分析サービスから得られるデータを組み合わせクラウドサービスで提供するインターフェースを通じて、「機械管理」「生産管理」「施工管理」「安全管理」の4つのデータをお客様が総合的にデータ管理できます。

濱野: まずは「機械管理」ですが、これは、われわれが扱っている建設機械そのものの情報です。お客さまがお持ちの建設機械を管理・メンテナンスしやすく、さらに休車時間を極力減らすことを目的として、さまざまな「機械管理」のサービスを提供しています。

二点目は、お客さまの「生産管理」です。リアルタイムと、リアルタイムではないものもありますが、どれくらい作業をしたのか、どれぐらいのサイクルタイムで現場を回っているのかなど、主にお客さまの現場の生産性を上げるための基礎データ提供をしています。

三点目は、i-Constructionに代表されるICTによる「施工管理」です。リアルタイムにどこを掘っているのか、どれぐらい掘っているのかなどを、クラウドサービス上で見ることができるサービスです。

最後は「安全管理」で、お客さまの現場の安全を確保するための情報提供を実施しています。

これが、現場管理に必要な代表的な4要素です。ここをベースにサービスの提供を行っています。次に、それぞれの詳細をご紹介します。

機械管理

濱野: 先ほどのテレマティクスのデータは、契約種別によって取得できるデータは変わってきますが、どの契約でも主に、機械がどう稼働しているか、コンディションがどういう状態なのかがわかります。

実際の画面は、このようになります。

濱野: 機械がいつどういう稼働をしたかのかがダッシュボードに表示されます。ダッシュボード上で確認できる警告には、イベントとアラートがあります。

「イベント」は、例えばエンジンが過回転になっているとか温度が上がっているとか、機械に起きた異常や出来事の記録で、機械に内蔵されている自己診断のセンサーから拾ったデータです。

大きな故障に至る前に対処したり、故障が起きた時に原因を特定したり、今までどんなイベントが積み重ねられてきたのかなどを分析するために、非常に有効なデータとなっています。

例えば、車でもよくありますが、前進しながらいきなりバックギアに入れてしまうことを繰り返していると、トランスミッションが早期に破損する事があります。そういったログが全部残るので、原因究明の際に非常に有効です。

それから、建機の異常を知らせる「アラート」。センサーが壊れているとか、オーバーヒートしそうなど、すぐに対処しなさいという警告が飛んできます。画面で見ることも可能ですし、お客様が設定したメールアドレスにリアルタイムに送ることもできますので、即時対処も可能です。

その他にも、海外ではタイヤモニタリングといって、タイヤの空気圧やタイヤの中の温度などを常にモニタリングするサービスもあります。建設機械のタイヤは非常に高価ですし、バーストすると大事故につながる可能性があります。これは、日本の電波法の関係でまだ国内には入れておりませんが、海外では既に商品として提供しています。

これらが、主にテレマティクスで得られる電子データのサマリーですが、機械を適切に管理するための情報は、実はこれだけでは足りないのです。例えば実際にオイルが漏れたとか、鉄で作られて構造物が折れたといった情報はセンサーからは拾うことができません。

そういったものをどこで補うかというと、我々のサービスマンが現場で行う目視による点検です。人間による点検や画像等の履歴をデータ化し、又、従来からご提供しているサービス「S.O.S」です。これはオイルや燃料、冷却水等を一定期間ごとにサンプルを抽出し、その液中の成分や混入物を分析するサービスで、故障の早期発見や計画的な予防整備に大きく役立ちます。

濱野: 例えば、エンジンオイル中のクロムが多く出ていることがわかると、どの部分が摩耗してきているかが推定できます。人間に例えると血液検査に似ていますが、定期的にその経過を見ることでエンジン等のコンディションを見ています。

そういった情報を、先ほどのテレマティクスのデータと過去の修理歴などを組み合わせ、起きた事象の原因分析に使用しています。

それから、建機が稼働する現場のレイアウトや稼働環境などの情報もデータ化しています。例えばブレーキの摩耗が早いといった時に、実際にお客さまの現場を見ることなく原因を想定する事に役立ちますし、又、機械から得られるイベントデータと組み合わせる事によって、摩耗の原因が機械オペレータの運転が影響しているのか、現場環境なのかを推定する事ができます。

このように、テレマティクスのデータだけではなく、人間によって集められた情報をデータ化し、CMセンター(コンディションモニタリングセンター)で集約することにより、総合的な分析が可能となり、機械の適正な使用や寿命延長に繋がるアドバイスやレポートをお客様に提出するサービスも行っています。

生産管理

濱野: 建設機械には、現場で荷を積む積込機と、荷を運搬する運搬機があり、特定のモデルには、そのそれぞれに荷の量を量る計量器がついています。これらの荷の運搬量はデータ化され、「このお客さまのこの機械は、今日の作業目標の中でどれぐらいの作業を完了している」などがリアルタイムにわかるようになっています。

ここで何ができるかと言うと、例えば、お客さまがある機械を選択して現場にセットで持ち込んだが目標運搬量に対して進捗が足りない、ということであれば実量の把握をもとに、「もう一サイズ大きな機械を入れないと間に合いませんよ」など、われわれは現場に最適な機種をご提案することができます。

お客さまが実際にどのぐらい作業したかという実量の管理だけではなく、作業や目標値に対してより最適な機械の提案をしています。燃料消費量も組み合わせて見ることができますので、燃料あたりの生産性を算出し、よりコストを下げるための機械編成や現場レイアウトをご提案できます。

建設機械による作業コストは、車の様に距離を走るものではないので、基本的には燃料1Lあたりどれぐらいの土を動かせるかに左右されます。その量をより大きくすることが、作業の生産性を上げることに繋がり、その為にこういったデータを使っています。

施工管理

濱野: 下記図は、三次元(3D)データを使ってリアルタイムな施工状況を地図上に表現したものです。

国土交通省で提唱されているi-Constructionは、3Dでの施工です。3Dを使った施工は、正確かつ熟練度も少なくて済む施工が可能ですが、まだまだ限られた現場でしか使用されていません。こういった要因の一つとして考えられるのが、3D施工に必要な機器が非常に高価であることです。お客さまが3Dでの施工をされて利益をあげられるかと言うと、なかなか厳しい現状であると考えられます。

国土交通省では10年以上前から情報化施工をやっていますが、なかなか普及しない主な原因は、そういったところにあるのかなと思っています。そこで日本キャタピラーでは、情報化施工に取り組んでいくお客様にいきなり3D施工にチャレンジしていただくのではなく、必要な時に3Dにアップグレードできる2Dの導入をご提案しています。2Dも3Dも、どちらもほとんどの機械に装着が可能ですが、2D施工は3D施工に比べると導入コストが非常に安価です。

i-Constructionも全体プロセスの話ですが、弊社のサービスでは、i-Constructionよりももう少し広い意味で全体をデータ化し、可視化して管理、改善していくことが最終的な目標です。

安全管理

濱野: 安全については皆さまの関心が非常に高く、この辺の技術を高めていくのが建設機械メーカーのトレンドでもありますし、多くの建設会社も力を入れていることの一つです。警告が出るのは単純な情報の一つですが、それだけではなく例えば危険な箇所に立ち入ったら警告が鳴る、このエリアから出たら警告が鳴るということも可能です。

つながる建機「Cat Connect Solutions」 -日本キャタピラー濱野氏 インタビュー

今試験的に始めているのは、現場の作業員に特殊な安全ベストを着てもらい、重機と接触しそうになった箇所のハザードマップを作成し、事故が起きる前に現場のレイアウトを変更するなどして、安全を確保することができるテレマティクスサービスの提供です。ベストやヘルメットの中に埋め込まれたRFIDタグに、センサーが感知すると、このタグが持っている位置情報を機械側が読み取ってマッピングしてハザードマップを作ります。

今、どこの建機メーカーでも力を入れて取り組んでいるのは、障害物に対するセンサー類です。音波を使ったもの、超音波を使ったもの、画像認識をするものいろいろあります。今までは、警告が鳴るだけだったのですが、自動停止を組み合わせるのが現在のトレンドです。

キャタピラーとしては、これらの機械管理、生産管理、施工管理、安全管理のサービスをまとめてCat Connect Solutionsと呼んでいます。

 

濱野: お客様が実際にCat Connect Solutionsのサービスをご利用いただくためのユーザーインターフェースをビジョンリンクと呼び、通信する機器類をプロダクトリンクと呼んでいます。

小泉: 建機を作っている側のメーカーとしては、これらは当たり前にサービス化してきていると思いますが、買う側の現場も当たり前のように買うようになってきているのでしょうか?

濱野: データの提供は様々な企業で取組みが進められていますが、お客様側でのテレマティクスのデータ活用に関してはこれからのところが多く、お客様はわれわれが活用してかみ砕いたデータやサービスにメリットを感じてご利用いただいているのだと思います。

小泉: 土木建築の現場は、オリンピックしかり震災復興しかり、さまざまな現場が増えていると伺っているので、施工技術がそれほど高くない人でも御社のサービスなどを上手に使えると思いますが、2020年はもうすぐやってきますね。

濱野: おっしゃるとおり、マシンコントロールやガイダンス、2Dや3DといったICT技術は、熟練工不足や経験不足を補う有効な技術です。ただ、これらの技術を活用するだけでお客さまの生産性が上がるかといったらおそらくそれはないでしょう。今お話したような、ICT技術の利用と、それを管理し現場を改善していく全体像がないとコストは下がらないと思います。

小泉: この業界も人不足ですよね?

濱野: そうです。例えば、3D機能を搭載した建機を使って運転する人は確保できても、土木業界に3Dのデータを作ることができる人は少ないです。思ったほどうまくいかないですよね。

小泉: そうですよね。ゴルフ場作るにしてもゴルフ場の3DCADデータをまず起こさなきゃいけないですよね。

濱野: それを、機械に流し込んであげて覚えこまさなくてはいけないですから。そういった技術者が少ないです。

小泉: そういう方を御社で派遣されることはないのでしょうか。

濱野: ICTの普及のため、お客様ご自身で使いこなせるようになっていただきたいと考えているので、お客さまに使い方を覚えてもらう講習会を実施しています。お客様自身で技術を習得し活用することで、お客様の収益性を上げていただくことがわれわれの大きな役目です。

小泉: だんだん建機自体も賢くなってきて、プロセスも改善されてくると職場環境もずいぶん改善されてきますよね。安全対策のソリューションは、実際には使われないことが多かったようですが、その辺の意識は変わってきているのでしょうか。

濱野: そうですね。今までのソリューションは、センサーの警告に応じてオペレータが何かしなさい、というものでした。そうなると、その警告への対処はオペレータ自身が判断しなければなりません。ヒトが気付かない部分をセンサー頼みにしているだけなので、停止するのは、最後は人間です。そこを自動停止にしていこうというのが今の動きです。

例えば、シートベルトをしているかどうか外から見ても分かりませんが、シートベルト未装着で近づいたところにはプロットが残ったり、ログが残るなど第三者がその状況を知ることで、抑止できることもあります。今、そういう方向になってきていると思います。

小泉: 自動車のテレマティクスに近い感じになってきていますよね。

濱野: もう技術的には自動停止は可能です。

キャタピラーの今後は自動化

濱野: 最後にキャタピラーの今後についてお話します。現場のデータがどんどん吸い上げられるようになってくると、データ解析が非常に大事になってきますので、それを解析してどういうサービスを提供するか、に注力していきます。これはアメリカ本国でも言っている話です。

ICT建機には、マシンガイダンス機能と、マシンコントロール機能があります。マシンガイダンスという機能は、オペレータの操作を音声や画面でガイダンスする機能が装着された機械で、マシンコントロールは、マシンを半自動で制御する(セミオート)機能で、ここがどんどん進化していくと、やはり将来的に目指すところは、自動運転です。

マシンガイダンスはマシンコントロールと比較してやはり安価ですが、スタンダードの何もついていない機械と比べると、精度も生産性も格段に良くなってきます。

現在、セミオートマシンコントロールまできていますけど、最終的なゴールはやっぱりオートメーション化ですよね。最終的には無人化に向かっています。

小泉: そうとう広大じゃないと、こういうのは使えないものなのでしょうか?

濱野: 今現在の技術ですと、ある程度広い場所で単純な作業に限定されています。日本みたいに狭い現場で人が入り組んでおり、建設機械も稼動しているような場所で今、実現できるかというと、難しいですよね。

ただ、先ほど言ったように、自動停止などはもう実現されているので、そういった意味では不可能ではないと思っているのですけど。ICT、AIなんかも含めて考えると、最終的なゴールは、いずれにしても自動化なのかなとは思います。

今はまだ省人化や熟練した技術を補うところで止まっていますが、最終的にはそこを人にとって代わるということを、どこも目指しているはずです。自動化するには、やっぱりデータの取得が今はカギになっていると思います。

小泉: キャタピラー自体で、クラウドサービスは提供されるのでしょうか。

濱野: そうですね。建機の位置情報や動きが、一元的に入ってきますのでグローバルのデータが蓄積されています。

小泉: ネットワークがないところはどうされていますか?

濱野: 衛星です。われわれの海外の建機をビジョンリンクで見ようと思えば、今でも見ることができます。

小泉: いつぐらいのものからネットワーク化されるようになってきたのでしょうか。

濱野: 単純なデータだけでしたら、15年くらい前にはもうつながっていたと思います。GPSは1980年代ぐらいからで、機械のデータを取得したのは2005年のプロダクトリンクが最初です。

小泉: その辺はテレマティクスの歴史と割と近いですね。

濱野: あとは、建設機械側のセンサーやコンピューターのモジュール次第ですよね。そこで取得したセンサーのデータをただ飛ばすだけの技術なので、そのコンピューターモジュールがきちんとしてないと、有効なデータは生まれません。そこが発達したんですね。

小泉: PC技術の発達ということですよね。

濱野: それが発達した当初は、パソコンを建機につなぎに行っていたのですが、そうではなく飛ばそう、ということを考えたのです。

小泉: その前段階として、パソコンでデータを吸い上げることをやっていたのですね。

濱野: ただその頃は、建設機械にパソコンを持ってメカニックが行くことは異様な光景でした。音を聞いて修理をするベテランがいた頃の時代でしたので。

小泉: なるほど。そこまで来たということですね。発展的に考えると、将来は、自動化という流れだということですね。

濱野: 今までは、建機側からデータを収集するということに尽きていました。今度は逆に、建機側にアクセスすることができるようになるので、例えば、簡単なトラブルであればトラブルシュートができるプログラムを送ってあげることができるようになってきます。

機械から取得したデータをどうするかということではなく、機械側にアクセスして機械の中を変えていくということが、新しいサービスとしてできるようになるということです。

今、3Dを使った建機では、現場の設計変更があった場合、変更されたデータをWi-Fiで送り込んであげて、機械に覚えこませることが施工中にできるようになってきています。

小泉: アクチュエート部分についても技術が進んでいて、上りだけではなく下りも通信させることができているのですね。わかりました。本日はありがとうございました。

【関連リンク】・日本キャタピラー「Cat Connect Solutions」

編集部

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