動画性能を極めたマイクロフォーサー...

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動画性能を極めたマイクロフォーサーズの頂点、「LUMIX GH6」

動画性能を極めたマイクロフォーサーズの頂点、「LUMIX GH6」

■ マイクロフォーサーズ再び2021年5月に発表されたパナソニックの連結業績発表を見て、経済紙が一斉にコンシューマカメラ事業をやり玉に挙げ、撤退かと騒いだのは記憶に新しいところである。確かに「写真機」として見ればシェアは高くはないが、「動画機」として見ればトップブランドだと理解しているのは、限られた人達だけのようだ。【この記事に関する別の画像を見る】LUMIXのミラーレス一眼は、フルサイズのSシリーズと、マイクロフォーサーズ(以下M4/3)のGシリーズがあるが、特にM4/3のGHシリーズは動画機として、映像クリエイターからも高評価のモデルを多数輩出している。そんなGHシリーズの最新モデルが、今回ご紹介する「LUMIX GH6」である。昨年5月にはすでに製品開発が発表されており、2021年中に製品化とされていたが、少し遅れて今年3月25日発売となった。ボディのみの店頭予想価格は26万3,000円前後となっている。M4/3は、盟友オリンパスが昨年1月に日本産業パートナーズへ事業譲渡を完了するなど、先行きを不安視する声も聞かれたが、新生「OMデジタルソリューションズ」から「OM SYSTEM OM-1」が3月に発売されることが決まり、ふたたび盛り上がりを見せているところだ。センサーサイズがフルサイズの約1/4というM4/3のメリットを動画に全振りした本機を、早速テストしてみよう。■ フルサイズ機を小さくしたようなボディまずボディだが、GHはGシリーズのハイエンドモデルということで、機能もどんどん積む代わりにサイズもかなり大型化している。ただ今回のGH6はサイズ感としては前作GH5 IIに近く、奥行きが多少大きい程度である。機構が増えたぶん重量は約100g増したが、グリップが深くなったため、持ちやすさでカバーしている。奥行きが増えた理由は、液晶部とボディの間に空冷機構が入ったからである。手法としてはフルサイズのS1Hなどと同じだが、M4/3で空冷機構入りは珍しい。それだけ動画で安定した長時間録画を目指した結果ということだろう。ボディ全体のデザインとしても、録画ボタンを前面にも配置するなど、Sシリーズの影響が強い。一方で軍艦部にモニターを備えないため、撮影モードダイヤルが右肩、連写モードダイヤルが左肩というのは変わらない。グリップ部の奥には、Fnキーが2つ。背面のモードダイヤルやジョイスティックの方向もFnキーとして設定変更可能なので、ボディ全体のFnキーは17個にも及ぶ。軍艦部に新設されたのが、オーディオボタンだ。これを押すと、液晶画面およびビューファインダがオーディオ専用表示となる。本機では別売のXLRマイクロホンアダプターを使うと、合計4ch収録が可能になっており、これもより動画へシフトした機能の1つである。注目のセンサーだが、新開発の有効画素数2,521万、総画素数2,652万のLive MOSセンサーを搭載。ISO感度は100スタートで、絞り開放での撮影にもフィットする。フレームレートも4Kでは120p、FHDでは240pを実現。ハイスピード撮影ではFHD 300fpsの高速駆動を実現する。加えて画像処理エンジンも、S1H時代から処理能力が2倍に向上した新ヴィーナスエンジンを搭載。高速センサーから大量に流れてくるストリームを処理する能力があるからこその、ハイフレームレート記録である。また今回は記録フォーマットとして、ProRes 422およびProRes 422 HQもサポートした。MP4、MOVと加えて3種類のフォーマットをサポートする。ただ、それぞれのフォーマットで記録可能な動画には差がある。ここで一覧でまとめておく。【※フォーマットの後に「*」がついているものは、バリアブルフレームレートでも収録可能】これが1台のカメラのスペックとは思えない膨大な種類の組み合わせをサポートしており、まさにかつてのビデオカメラを超える存在である事がわかる。こうして一覧にすると、もっとも多彩なフォーマットに対応するのはMOVで、多くの人はこれを選ぶ事になると思われる。MP4はかなりビットレートを抑えているので、ネットへの“撮って出し”などに使うといいだろう。一方ProRes 422で記録できるのは5.7Kに限れている一方で、他のフォーマットがサポートしていないシネマ専用の24pちょうどで撮影できる。こちらはデジタルシネマのワークフロー向けという事だろう。モニターはアスペクト比3:2、3.0型約184万ドットのタッチパネル。横出しのバリアングルは以前のままだが、今回はさらにちょっとだけ上方向にチルトできるようになった。これにより、左サイドにケーブル類を挿した時も、モニターの回転の邪魔にならなくなった。ビューファインダはアスペクト比4:3、0.5型OLEDである。メモリーカードスロットは1番がCFexpress Type Bカード、2番がSDカードとなっている。ダブルスロット記録も可能だが、800Mbps以上のモードはCFexpressでしか記録できないので、ハイエンド利用を予定しているユーザーはCFexpressカードも必須である。底部の三脚穴は、ビデオボス用の穴を備えた。これは雲台とカメラの間での回転を止めるための機構で、ビデオ三脚では標準である。ただデジタル一眼のほとんどはボス穴がないので、ビデオ三脚ではボスがスプリングで引っ込むタイプでなければ、ボス自体を取り外すしかなった。ビデオ三脚ユーザーには朗報であろう。ちなみになぜビデオ三脚だけに回転留めのボスが必要かというと、三脚でチルトした場合に、カメラの光軸がチルト軸に対して直交していないと、水平がズレるからである。細かい話だが、意外に大事なのだ。■ 解像感の高いパリッとした描写ではさっそく撮影してみたい。今回使用したレンズは、LEICA DG VARIO-SUMMILUX 10-25mm F1.7と、同25-50mm F1.7である。画角比較のカットのみキットレンズのDG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0を使用している。まず多彩なフレームレートに対応しているが、画角はどうなるのか、という心配がある。フルサイズ機ではフレームレートが上がると読み出し範囲が狭くなるといった問題があるからだ。だが本機では、解像度やフレームレートに関係なく画角は同じである。こうしたハイスピード駆動に対する余裕が、本機のポイントと言えるだろう。動画サンプルとしてどのフォーマットで撮るか悩んだが、基本は5.7K/59.94pで撮影することにした。また本機はV-Log撮影も可能だが、今回はあえてカラーグレーディングなしの「撮って出し」の絵でご覧いただくことにした。V-Log撮影に関しては、また別途ご覧いただく機会もあるだろう。明るいズームレンズとの相性も良く、発色や解像感の面でももうしぶんない。SDRでの撮影だが、空の階調も綺麗で破綻なく撮影できる。手ブレ補正は、今回レンズ補正のないレンズを使用しているが、ボディ内補正で5軸7.5段(GH5 IIやG9は6.5段)あるので、それだけでかなり補正される。従来通り電子補正や手ブレ補正ブーストもあるが、そもそもボディ内補正が強いので、それほど違いがない印象だ。全部ONにすると、動画でもフィックス映像の撮影もできる。サンプル動画のうち、ローアングルの黄色い花のカットは手持ち撮影である。M4/3はセンサーサイズの関係で被写界深度が深くなる傾向があるが、35mm換算で80mm以上の画角でF2以下のレンズなら、かなりボケを作る事ができる。AFも新ヴィーナスエンジンの高速化により、フォーカス性能が全般的に向上している。とくに顔認識・瞳認識に強く、いちど合焦すると、顔が影に入っても問題なく追従する。また新機能として、AFの動作範囲を制限する「フォーカスリミッター」が搭載された。これは、あらかじめAFの動作範囲を決めておくことで、手前にモノが横切ってフォーカスがふらついたり、逆に近距離だけにAFを集中させたい場合に利用できる。従来はAFの反応速度だけでカバーしていたような撮影も、反応速度+AF範囲指定でより的確にコントロールできるようになっている。サンプル中の人物の振り向きカットは、フォーカスリミッターを最近接から約1.5mまでに指定して撮影している。対面で撮影している場合、モデルにモニターを見せながらビューファインダで撮影したい時もあると思うが、従来機ではモニターとビューファインダが排他仕様だった。しかしGH6ではモニターを対面側へ向けた場合は、モニターとビューファインダの両方が使える。加えてHDMI出力も同時に出せるので、同時に3出力出せる事になる。また動画再生時にも、HDMI出力と背面モニターが同時に使えるなど、細かいところで排他仕様が排除されている。■ 夜間撮影はそれほど明るくないが……動画モードにおけるISO感度は、ISO100~12800までとなる。またイメージセンサーから異なるISO感度の画素を読み出し、1つの画素に合成することでダイナミックレンジを稼ぐ「ダイナミックレンジブースト」機能を搭載する。これにより、HDR撮影時には13+ストップの広いダイナミックレンジを得ることができる。したがってV-LogまたはHLGと組み合わせる事になるが、この場合は最低ISO感度が2000からのスタートとなる。そうなると昼間の撮影にはNDフィルターは必須になるが、今回は用意できなかったため、夜間撮影で使用してみた。まずは通常モードでいつものようにISO感度を倍に上げて撮影している。シャッタースピード1/60、F1.7で撮影した。だいたいISO 6400ぐらいが目視での明るさに相当するが、最高でもその倍までしか上がらないため、夜間の撮影に強いとは言えない。同じく夜間に、ダイナミックレンジブーストでV-Log撮影してみた。ISO感度は6400で撮影しているが、5.7Kで撮影したものをHD解像度までシュリンクすると、ノイズも消えて使える絵になる。サンプルの前半は、パナソニックから提供されているRec709への変換LUTを当てただけのもの、後半は後処理でカラーグレーディングとノイズリダクションを施している。後半のほうがノイズが少ないので、再エンコードによる圧縮ノイズも軽減されている。もう一つ忘れてはならないのが、スロー撮影だ。HD解像度なら最大240pで撮影できるので、編集でスピードを落としてスローを作る事ができる。それに加えて、カメラ側でスロー状態で記録するVFR撮影もできる。両者の違いは、ハイフレームレート撮影では音声も記録されるし、撮影中にAFも動くなど、普通の撮影とまったく同じなのに対し、VFR撮影では音声は記録されず、フォーカスはマニュアルのみとなる。一般的にはハイフレームレート撮影の方がメリットがあると思われがちだが、こちらではスローに落としたときに、電子手ブレ補正の動作が邪魔になる事がある。一方VFR撮影では、電子手ブレ補正が自動でOFFになるため、手ブレ補正の誤動作が目立たなくなるというメリットがあるようだ。実際のサンプルでも、その様子が見て取れる。■ 総論LUMIX GHシリーズは、2017年にGH5の発売以降、2018年にGH5S、2021年にGH5M2と、5ナンバーを細かく刻んで来た経緯がある。それぞれに進化点はあったものの、やはり次ナンバーGH6ではどうなるのかが注目されていたところだ。そんな中、新規開発されたM4/3サイズの高画素ハイスピードセンサーとより高速な画像処理エンジンを組み合わせ、高スペックをリーズナブルな価格で実現してみせた。フルサイズセンサーでは技術的にも価格的にもできなかった領域を、新たに開拓したカメラと言えそうだ。加えてモニター、ビューファインダ、HDMIの同時出力など、これまで動画のプロが困っていたところを細々修正してきている。操作性についても、ボタン配置をS1Hに寄せることで、カメラを持ち替えても同じ操作性で撮影が実行できるなど、役回りがよく考えられたカメラでもある。動画撮影分野では、ボディ、レンズまで含めて半分から1/3のコストでフルサイズと十分戦えるカメラ、それがGH6の存在理由と言えそうだ。

AV Watch,小寺 信良