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「長引くコロナ禍の日々。いまは何げない話を書いて“しまう” 」松居大悟監督が映画で描きたかったこと

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松居大悟

 劇場公開前から評判が評判を呼んだ日本映画がある。『バイプレイヤーズ』『くれなずめ』の松居大悟監督が、盟友・尾崎世界観(クリープハイプ)の楽曲に触発されて作り上げた映画『ちょっと思い出しただけ』だ。⇒【写真】映画『ちょっと思い出しただけ』より

「長引くコロナ禍の日々。いまは何げない話を書いて“しまう” 」松居大悟監督が映画で描きたかったこと

ある一日だけで遡っていく“定点観測”ラブストーリー

 本作は’21年から’15年の6年間を、ある一日だけで遡っていく“定点観測”ラブストーリー。元ダンサーの照生(池松壮亮)とタクシー運転手の葉(伊藤沙莉)の関係の移り変わりを軸に、コロナ禍の現在から過去へと時計が巻き戻り、思い出がひもとかれてゆく。’21年、第34回東京国際映画祭で観客賞とスペシャル・メンションをダブル受賞した本作は、松居監督にとってもメモリアルな一本となった。「尾崎世界観くんや池松壮亮くんとは10年以上前から作品を作ってきましたが、ここ4、5年は一緒にできていなかった。それが’20年春に尾崎くんから主題歌の『ナイトオンザプラネット』が送られてきたとき、止まっていた時間が動きだした気がしました」

大きく変わったのは周りや観客を信じる力

 きっかけをつくった尾崎は、劇中にも役者として出演。主演の池松やスタッフ陣にも懐かしいメンバーが揃った。「変わっていなくて気持ちいい部分もありましたが、成長のほうをより感じました。周りやお客さんを信じる力が身についたし、昔みたいに手持ちカメラでエモーショナルな芝居を撮って『やったぜ』ではなく、画を信じて引いて撮るようになったのは、大きな変化だと思います」

この映画の主人公は、あくまで日常

 主観一辺倒ではなく、客観視できるようになったからこそ生まれた、洗練された作品作り。その共通認識は「この映画の主人公は、あくまで日常。観てくれた方々が、それぞれが過ごしてきた年月や時間をちょっと思い出してくれたら」という本作のコンセプトにもつながっている。作品の構造におけるアイデアも、視野が広がったからこそ生まれたものだという。「映画は時間、演劇は空間を描ける芸術だと昔は思っていました。今回も、最初は時間軸や時系列についてすごく貪欲であろう、他の映画監督がやっていない方法を考えようと意気込んでいたのですが、あるタイミングで『そういうのはもういいか』と肩の力が抜けた。 その結果、定点観測でさまざまな人の生活を描く形式に辿り着けました。あと、前作の『くれなずめ』のときに、自分が意図していなかったホモソーシャル的な切り取られ方をされてしまうことがあったんです。そこで今回は、いろんな方に読んでもらったり、言葉遣いなどもかなり意識しました」

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最終更新:週刊SPA!